2014.04.15「経済学の犯罪」 著者:佐伯啓思さん 講談社現代新書
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『経済学の犯罪 - 稀少性の経済から過剰性の経済へ』
著者 : 佐伯啓思さん 講談社現代新書■ 社会基盤的一般共通認識、価値観、前提条件・・・、パソコンでいえばOSがおかしくなってきています。現状の社会との齟齬が顕著に見られるようになったり、指摘されることのなかったバグが見つかったり、時代の大転換期であることが実感される理由です。この前読んだ本(「来るべき民主主義」著:國分功一郎さん)で判明したのは、三権分立が大前提の議会制民主主義システムにバグがあった(見つかった)ということです。代議士を有権者が選挙を行い選任し、憲法の範囲内で権力を与え民意を政治に反映させるというシステムで国民主権を標榜してきましたが、実は、実行部隊である行政システムが実権、実行力を実質的に支配しており、民意で選ばれた政治家(首長、議会)の実権は承認システムのみと成り下がり、実態は小さなものだったようです。実質的実行権力者である行政に民意を反映するシステムがないがために、民意がほとんど反映されることなく日本の国土は開発されてきました。行政による計画遂行システムに民意が参加できるシステムが必要だったのです。この行政住民参加システム文化がなかったがために、大災害地域でのまちづくりを住民と共に行うといっても、お互い見よう見まね、手探りの中で進めていっているので、各地域の差も激しく、なかなかうまくいっていないようの見受けられます。
■ 近代のシステムは右肩上がりが大前提のシステムでした。近代システムの象徴、資本主義システムの大前提も同様、「人の欲望の右肩上がり」が大前提のシステムだったようです。よって十分に成長してしまった豊かな先進国が停滞するのは当然の結果のようです。実体経済が中心だった時代はいつの間にか過ぎ去り、停滞する実体経済の打開策としての金融資本主義という訳の分からない辟易システムが、化け物のように世界経済のみならず、国の中枢である権力システムをも揺さぶるような巨大な力を持ってしまっています。「資本主義経済がおかしくなっている」みなさんもそう感じているのではないでしょうか?これは、化け物となってしまったコントロール不可能の金融資本主義が一つの原因のようです。
経済についての本なのですが、経済学者の経済理論の本ではありません。私たちの生活・暮らしを、小さい地域から国、世界へとつながる世界観の中で、経済学者たちが当時の社会情勢の中で考えた経済理論とはいったい何を意図としていたのかを振り返りながら、現状の世界、そして日本の状態を説明し、これからの目指すべき方向性を指し示す内容となっています。
佐伯啓史さんの本は、資本主義システムの行き詰まりを、現実に生きているうつろいやすく裏腹な心を持った人々がつくる社会を前提に論じてくださっているので、実感として資本主義システムの行き詰まりをわかったような気にしてくれる大変おもしろい内容の本となっています。
(読んでいるときはわかったような気になりますが、説明してみろといわれると無理なので、なにもわかってはいないのですが、何となく分かったような、”自分は頭が良くなった”と感じる内容です。みなさんも読んでみてください)特に参考になった項目
・「社会的土台」を市場中心主義が破壊する
・「国家」が市場に従属する
・経済学の前提の誤り
・「合理的な科学としての経済学」という虚構
・「大地」に根ざした経済を養護
・「交換の経済」と「生活の経済」
・貨幣が過剰性を生み出す
・「過剰性の原理」が「希少性の原理」をもたらす
・「過剰性」がさらなる「過剰性」を生み出す金融市場
・社会的な価値は市場では選べない
・「善い社会」を構想する時代の変化を表す数々の論点が挙げられていますが、そのなかでも「経済学前提の誤り」という、そもそもの大前提が時代の変化により成り立たなくなってしまったという点に大転換期である理由を見てとることができます。
これは、議会制民主主義同様、経済においても大前提に問題があった(見つかった)といってよいようです。多くの分野で、昭和モダニズムでは当たり前だった大前提を再考する時代、つまり大転換期をむかえています・・・
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『経済学の犯罪 - 稀少性の経済から過剰性の経済へ』
著者 : 佐伯啓思さん 講談社現代新書
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