コラム

2014.01.20『商店街はなぜ滅びるのか』  著者:新 雅史 さん 出版社:光文社新書



■ 誰しもが認識している”商店街問題”ですが、本質的な問題はいったい何なのでしょうか?
“商店街”と言われても、あまりにも関連事項が広範囲にわたるため概観することもできず、よくわかりませんでした。
全体の中での位置付けができないので、個々の事例について、”確かにその部分は問題なので解決すべき だ”というように、個別レベルの局所的問題認識にとどまっていました。
このような状態ですので、商店街個別のさびれた状況や時々見受けられる復活事例を見ても、本当の問題は何で、成功事例は本当に日本の商店街問題の本質的な解決につながっているのかどうか、など、よくわからず半信半疑の感想しか持つことができませんでした。
この本を読むと、商店街問題を概観することは、日本の生活(ライフスタイル)の近代化の過程を”政治・経済・社会”の面から、つまり生活を取り巻く近代史全体を概観することにつながることがわかります。

■ 序章にこう書いてあります。「商店街の成立と衰退の過程を、近代社会の政治・経済・社会変動の配置のもとで描き出す試みは管見のかぎり見当たらない。本書はそれを描き出す試みである。」
この本を読むと、この試みがいかに重要であるのかがわかります。商店街を概観(把握)するには、政治・経済・社会のなかでの配置が必要だったのです。今まで個々の事例で問題に上がっていたことは、この本の全体配置図の中の一部分だったようです。

■ 今までの基本認識の問題点-1
それが、第一章「両翼の安定」です。(これを知っただけでも大きな意義がありました。)

戦後の日本は、「雇用の安定」だけで実現したわけではなく「自営業の安定」という、両翼の安定により実現したという事実です。総中流社会は、サラリーマンの「雇用の安定」と都市部の「自営業者の安定」によりもたらされたのでした。

■ 今までの基本認識の問題点-2
「”商店街”は決して伝統的なものではなく、おおくの商店街は日本の近代化の産物であった」ということです。読み進めるに従い、戦後の近代化の中で商店街が成立する過程をつぶさに見ることができます。

■ このような、いくつもの新たな視点の提示、商店街をとおした社会・政治・経済の全体像の提示、良く見受けられるステレオタイプの社会認識や商店街のレッテルの是正、本質的問題点と未来につながる解決案を提案する内容となっています。
この本を読むことは、商店街の歴史や問題点を学ぶということばかりではなく、戦後の日本人は何を目指し生活の近代化を成し遂げ、豊かさを求めてきたのか?を学ぶことであるといってもよいようです。

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「商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道」
著者:新 雅史 さん
出版社:光文社新書

 

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