2014.07.09『つながる図書館』 著者:猪谷千香さん <ちくま新書>
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この本は”図書館とは何か”を考えるための事例を集めた本です。
それは同時に”公共とは何か”を考えることにもつながることがわかります。
そして、この本は”建築”の本です。■個性的な図書館が全国各地にありました。
指定管理者制度後の成功している話題の図書館をレポートした内容となっています。専門的になりすぎず、ラフにもなりすぎず、バランスをとった、多くの人々にとって読みやすい内容となっています。
今世紀に入り、なぜ急に個性的、魅力的な図書館ができるようになったのかといえば、”指定管理者制度”ができたからだったようです。これは小泉改革時代、地方分権の流れのなかでできた制度とのこと。図書館の運営を外部に委託できるようになり、能力の高い運営者が個性的で魅力あふれる図書館を次々と作り上げていっています。(うまくいっていない施設もあるようですが。)各図書館それぞれの特長を、運営主体のみなさんへのインタビュー、利用状況の観察と聞き取り調査等現地取材と、基礎的資料をもとに特徴をあぶり出してくれています。
図書館の指定管理者制度の導入の理由の一つに、自治体の予算不足があるとのことです。他のさまざまな分野の本を読んでも必ず出てくるのはこの自治体の予算不足。簡単に考えれば全体的に住民サービスは低下していくことは間違いありません。しかし、市民自治の上で、必要なところへ必要な分だけ優先順位を明確に予算配分を行うことができるような地域社会が実現できれば、もしかすると行政サービスが向上していく時代になるかもしれませんね。生き残りをかけた地域間人口奪い合い競争の中で、図書館も一つの強力な住民確保のための一アイテムになっていることがわかります。
公立でもない、市立でもない、公共図書館。
日本には”図書館法”というものがあり、そこには公立図書館と市立図書館のみしか定義されていないそうです。(市立図書館は、”日本赤十字”、”一般社団法人”、”一般財団法人”が設立する図書館とのこと)
インターネット、端末装置技術の発達により技術的に簡単に成立するようになり、”図書館法”外の公共図書館が、全国各地に開設されるようになってきています。インターネット、SNS、携帯端末装置は、生活をどんどん変革していっていますね。身近な地域の公共図書館もどんどん増えていきそうです。すでに、魅力的な”建築”は完成予想パースや竣工写真だけでは伝えられなくなりました。この本を読んで分かるように、”箱”の魅力は”従”となってしまい、運営主体のプログラムの魅力が”主”であることがわかります。日本中”箱”だらけになってしまった今、中身がない施設は放置されるようになり、維持費が財政を圧迫する事態に陥っています。利用者にとっての魅力は”箱”があるかどうかではなく、”利用したくなる施設であるかどうか”に移り変わっています。そういった時代なので、この本は”建築”の本なのです。
■気になる項目
指定管理者制度 2003年
課題解決型図書館
武雄図書館+金沢21世紀美術館+旭山動物園
図書館の自由に関する宣言
地域の情報ハブとしての図書館 2005年
歩いていける距離の図書館
地方分権一括法 1999年
武雄図書館
“市民価値”を高いことをやるだけ
図書館の解放宣言
官営図書館であり公共ではなかった
自治体の産業化
などなど
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『つながる図書館』 コミュニティの核をめざす試み <著:猪谷千香さん:ちくま新書1051:2014>
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