コラム

2014.05.26「ウェブ社会のゆくえ」 〈多孔化〉した現実のなかで

ウェブ社会のゆくえ 〈多孔化〉した現実のなかで <鈴木謙介さん著:NHKブックス:2013>

■ まずは抜粋

『インターネットなどの電子的なコミュニケーションは、現実の時空間から独立してある空間の意味を生成し、その場所を情報空間にする力を持っているということになる。だからこそ、電子メディアが普及した現代の情報空間は、特にコミュニケーションという視点で考える場合、都市論や建築論のような物理的空間を対象とする学問だけではなく、社会学的な観点からも論じられなければならないのである。』

次のフェーズに突入している日本では、社会学が主導権を握る扇の要となる学問になってきていると感じています。それは、”床”が足りなかった時代が終わり、過剰な”床”あまり時代に入ってしまったことを意味しています。いかに作るのかから、いかに使うのかが主題となる時代になったのです。

■ハード優位社会が終わってしまった日本では、いかに社会をデザインしていくのかがこれからの課題となってしまったようです。なぜなら、人口減少による社会問題が顕在化していく中で、人口争奪戦が激しく行われ、破れた地域は著しく不便な生活を強いられる可能性があるからです。限られた労働力人口の中でいかに効率よく生産力を上げ、高齢者と子供たちを支えていくのかが、3、40年の間、当面の課題となっています。それには、いかに優れた社会システム、つまり、ソフトデザインを作ることができるのかが鍵を握っています。

”昭和的な感覚”という表現が一般的共通感覚になってしまったほど時代感覚は更新されています。それほどに時代は転換し、変化しています。これを読むと、(むろん全てではないですが)昭和的手法では、これからの社会、なかなか機能していかないことがわかります。新しい視点のクリエイティブ性あるソフトデザインが求められています。

■SNSも新しいサービスが次々に登場し、数年単位の流行り廃りの様相で、長期間にわたり定着するサービスを作り上げるのは難しいようですが、独特のガラパゴス文化である日本では、どうも、LINEが若者全員がやっているといっても過言ではない電子メディアの覇者となっているようです。(いつまで続くのでしょうかね?)日本人特有のコミュニケーション感覚=身近な人間関係と一般社会との関わりの特性に高度にシンクロした結果でしょう。その理由もこの本を読み進めていくに従いわかるような気がしてきます。
この状況をみると、文化特性に高シンクロ率をしめすソフトデザインをいかに作ることができるのかが、これからのクリエイティブ性を評価する一つの指標となりそうです。

■めまぐるしく更新されていくライフスタイル。電子メディアはますます生活に、人間関係に、社会に、侵食していっています。ウェブが無い世界は既にあり得ないほど魅力のない(不便な)世界になってしまっています。この本は、3.11を過ぎた2010年代初期の現実の実体社会とウェブ社会の関係性について論じられた、これからの社会の方向性を示唆する大変興味深い内容となっています。

特に興味深い項目を挙げてみます。

○ 現実を侵食していくウェブ
○ ソーシャルメディアが”私”をつくる
○ 親密とはなにか 役割空間とソーシャルメディア
○ 多孔化現実
○ 観光 聖地巡礼 
○ 後期近代の共同性
○ 喪失の体験と共同性の原始
○ 記憶の継承 個人空間と共同性の接続

などについて論じられており、大変勉強になります。

 

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 ウェブ社会のゆくえ 〈多孔化〉した現実のなかで <鈴木謙介さん著:NHKブックス:2013>

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