コラム

2015.02.04■ 「リノベーションとはなにか? : 2014」- 01

 

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目的はあくまで建物を尊重し寿命まで使いきること、そのための一手段がリノベーション。新築(新品)を絶対価値としたリフォーム時代に変わる、新しい価値を再創造すること、つまり、”価値”と”時間”をリ・イマジネーションすることが文化的アップロードとなる。”ある時代”の様式に、価値の異なる”他の時代”の様式を移植、価値の異なる時代様式が並列する時代様式並列空間が一例である。

※上記のリノベーションの定義は、福岡のリノベーション文化浸透過程を黎明期から観察し、建築に限定することなく、昼と夜のセカイの文化状況を調査・分析することにより導きだした2014年時点での結論です。

 

■ 「リノベーションとはなにか?」はじまりは2004年

初めてのリノベーションデザインを山王マンションでさせていただいた十数年ほど前の2004年から、「リノベーションとはなにか?」を、考えはじめました。手探り状態でリノベーション文化浸透過程を観察、分析するなかで、20世紀では当たり前だった一般社会の標準的、常識的価値が劣化・縮小していくのを感じるようになりました。それと反比例するように、新しい価値が成長・拡大・多様化していくのを実感するようになり、いったい日本社会で何が起きているのかを調べるようになりました。

調べていくうちに、次第に時代の大きな変化に気づきはじめました。社会基盤システム、パソコンでいえばOSが、以前のように機能しなくなってきている!OS上で動くアプリが、機能するはずないではないか・・・。その理由のひとつは、設計上大前提としている初期条件自体が大きく変化しているためでした。設計・計画の多くは想定される初期条件をもとに設計されます。設定された初期条件自体が変化してしまえば、機能しなくなるのはあたりまえです。それが、アプリのレベルでしたら、アプリを修正したり、取り替えればよいのですが、影響の大きな社会基盤システムは、簡単には修正、取り替えはできません。設計時に想定した初期条件が変化してしまったOSを使い続けざるを得ない現状が続いていることにより、各方面、各分野でシステムエラーによる問題が起きているようです。時代の大転換期である所以です。

建築分野もそうでした。リノベーション現象は、それまで学んできた建築的考え方や建築界の言葉では、分析、説明、表現することができないことがわかってきました。建築、インテリア、新築、改築、リフォームとかいう一分野内の違いレベルの話ではありません。それは、もっと大きな、文化、経済、社会、人、地域、国、世界、そのものが大きく変化してしまう時代、そう、「時代の大転換期」だったのです。


■ 出建築(しゅつけんちく) ー グランドライン(=大衆文化の大海)へ飛び出す。

リノベーションを考えはじめた頃、時代の大きな変化に次第に気づきはじめ、不安と焦りを覚えようになりました。それまで学んできた建築的考え方や建築界の言葉では、この現象を分析、説明、表現することができない・・・。簡単にいえば新築を頂点とするリフォーム時代から、個人的感性価値に立脚したリノベーション時代へ文化移行が起きはじめていたのです。それは、専門性の高かった”建築”が大衆文化に飲み込まれていく、”建築大衆化現象”でした。

文化移行が進むなか、新築を頂点とするリフォームは標準的・一般的価値ではなくなり、多数の中のひとつの価値になりました。社会の標準的・一般的価値自体が変わってしまう大転換期のなかではじまった、新しい文化(=価値)であるリノベーションの勃興により、それまでの常識も変化してしまったのです。結果、リノベーション文化・現象を昭和モダニズム的建築思考、言葉で説明できるのは、ハード分野の一部分だけになってしまいました。それは、ハード優位社会からソフト優位社会へ文化移行したことを意味しています。

時代の大転換期、縦割りジャンル内のヒエラルキー構築文化ではなく、任意の複数ジャンル内要素群からのサンプリング、リミックスで創造性を競い・楽しむ文化構造に変わっていっている状態で、一ジャンル内の知識・言葉・考え方だけでは作品・現象・文化全体を俯瞰することができなくなってきました。一ジャンルから飛び出したリノベーション文化ですが、不動産の大衆開放、有り余る空き家の増加、新しい感性豊かな若者たちの出現、などの諸条件も加わり、他ジャンルの大衆文化を見境なく吸収、巨大な怪物=大衆文化ムーブメントへ成長していっています。このような状況の変化により、リノベーション現象は、大衆文化全体に視野を広げなくてはわからない、説明できない、感じられない文化になってしまったのです。

表通りの本流文化(昼のセカイ)の頂点であるハイカルチャーとして権威を保ってきた”建築”が、インターネットと親和性の高い路地裏サブカル文化(夜のセカイ)の急速な進化と侵食により足元から融解がはじまり液状化、堅牢なるピラミッドが崩れ去ろうとしています。建築を含め、表通りの本流文化(昼のセカイ)は、路地裏サブカル文化(夜のセカイ)の際限なき、ルールなき、倫理なき侵食により、権威を、ルールを、倫理観を崩壊させられ、底が抜け落ちた状態になってきています。防腐剤は効かず、有効なワクチンもない。このような状況に文化移行してきていることにより、多くの現象が、昼/夜両方のセカイまで視野を広げなくては説明できなくなってしまいました。

出建築!大衆文化という大海=グランドラインに跳びだし、ルール無用の無法地帯、夜のセカイを探検し始める決意をしました・・・

 

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こちらもご覧ください。

「リノベーションとはなにか? : 2014」- 02
「リノベーションとはなにか? : 2014」- 01
「D.I.Y.精神とはなにか? : 2014」- 01

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