コラム

2014.05.05「市民自治」著者:福嶋浩彦さん:ディスカヴァー携書:2014

「市民自治」 みんなの意思で行政を動かし 自らの手で地域をつくる
著者:福嶋浩彦さん:ディスカヴァー携書:2014

■ すでに、複数の自治体で「市民自治」が実践されていた。

『社会基盤的一般共通認識、価値観、前提条件・・・、パソコンでいえばOSがおかしくなってきています。現状の社会 との齟齬が顕著に見られるようになったり、指摘されることのなかったバグが見つかったり、時代の大転換期であるこ とが実感される理由です。この前読んだ本(「来るべき民主主義」著:國分功一郎さん)で判明したのは、三権分立が 大前提の議会制民主主義システムにバグがあった(見つかった)ということです。代議士を有権者が選挙を行い選任し、憲法の範囲内で権力を与え民意を政治に反映させるというシステムで国民主権を標榜してきましたが、実は、実行部隊である行政システムが実権、実行力を実質的に支配しており、民意で選ばれた政治家(首長、議会)の実権は承認シス テムのみと成り下がり、実態は小さなものだったようです(多くの自治体では)。実質的実行権力者である行政に民意を反映するシステムがないがために、民意がほとんど反映されることなく日本の国土は開発されてきました。行政による計画遂行システムに 民意が参加できるシステムが必要だったのです。この行政住民参加システム文化がなかったがために、大災害地域での まちづくりを住民と共に行うといっても、お互い見よう見まね、手探りの中で進めていっているので、各地域の差も激しく、なかなかうまくいっていないようの見受けられます。』
と、以前書きました。「来るべき民主主義」(國分功一郎さん著)を読むと、議会制民主主義システム自体に問題があり、根本的に修正する必要があるのではないかと思ったのです・・・

しかし、現行のシステム内でも、志がある人々が集まれば、十分実現可能なことがわかりました。それが「市民自治」(福嶋浩彦さん著)です。福嶋さんは、12年にわたり我孫子市長を務められ、「市民自治」を実践されてきました。この本は、我孫子市で実際に実践されてきたことを元に構成されています。

待機児童問題もそうでしたが、国の対策不足により問題が解決しないのではなく、横浜市や我孫子市のように、首長がやる気になれば、問題は解決できるのです。(問題もあるようですが) つまり、首長と議員の意識、そして、首長と議員を選ぶ市民(有権者)の意識の問題でした。範囲を地方自治全体に広げても、これと同様の構図です。
我孫子市の取り組みをみると、やろうとすれば、ここまでできるのか!と、感心させられることばかりです。これを読むと、特に、OS変更などという小難しいシステム論などは必要ないように思わされます。現地方自治法内で対応可能ということです。(しかし、ハードルはとてつもなく高いように感じます。)

最終章の最後に「すべて逆立ちしていないか?」という項目があります。日本の常識的考え方が、そもそも逆だったのです。(借り物の議会制民主主義)。地方自治や国政に対しての、考えかたを逆にしなければ、システムを修正し新たに作ったとしても、実質的に大きくは変化せず、機能しないことがわかりました。(借り物は所詮借り物で文化として根付いていない)。つまり、OSの変更は、逆立ちした考え方を一般常識とし(自国の文化とし)、市民の方から変更を始め、市町村→県へと広げ最後に国のシステムを変更していくことでした。

議会制民主主義システム自体に問題があり、根本的に修正する必要があるのではないかと思ったのですが、結局どうしたら良いのか難しすぎて私には判断できません(当然できるわけがない)が、問題点はわかったつもりです。どちらにせよ、市民自治が文化として根付かない限り、地方分権・市民自治は効果的に機能しないようです。

140505-01

■全体的に誰もが読める平易な文章で、概念と具体例を挙げ、わかりやすく丁寧に書かれています。中学生以上の学生のみなさんにも十分理解できると思います。地方分権は国が主導的にやっている限り実現しないと指摘されていました。これを読めばそれも納得です。ここまで市民自治は可能だったのです。

果たしてこの市民自治文化は、日本で根付くのでしょうか?考えた方を逆立ちさせるというとんでもない発想の転換をしなければなりません。しかし、いずれにせよ、こうせざるを得ない時代に突入してしまったわけですから、はやく実現させた自治体が勝ち組となり生き残っていくようなことになりそうです。
そう、これからの地方自治時代は、人口争奪時代であり、地域間の大競争時代でもあります。「大きな公共」と「小さな政府」が生活の豊かさを決定する時代です。一人だけ豪勢な住まいにいたとしても地域が疲弊してしまったら、豊かな生活が送れなくなってしまうでしょう。

■本の目次から主な項目を抜粋しました。これをすべて実践しているのです。すごいですね。

私も初めて知りましたが、「議員内閣制」と「二元代表制」の違い、国政と地方自治の違い、首長、議会、行政、市民、それぞれの役割。これらも明確に提示されています。
他にも下記の項目について基本理念を貫くかたちで定義がされていますので読んでみてください。

・市民が行政をコントロール
・分権とは何か
・地域の質を高め、小さくする
・自治の土台は直接民主主義
・選挙とローカルマニフェスト
・計画策定への市民参加
・補助金の公募と市民審査
・予算編成の公開と市民参加
・財政面での市民参加
・議会への市民参加
・常設型住民投票
・行政の本質は「権力」
・議会は自治体の意志決定機関
・首長と議会はオープンな場で議論する
・議会が基本構想・基本計画をつくる
・自治体憲法としての「自治基本条例」
・公共の3つの領域
・提案型公共サービス民営化
・市民と行政の「共働」とは何か
・「大きな公共」「小さな政府」
・行政の利益か、公共の利益か
・全面公開と「外部の目」
・公共施設 量を減らして質を高める
・主権者市民になる
・一人ひとりの「想い」から出発する


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「来るべき民主主義」著者:國分功一郎さん:幻冬舎新書:2013 
「市民自治」著者:福嶋浩彦さん:ディスカヴァー携書:2014

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